2007年9月23日 (日)

高知の元気の源は地方公共交通の最大活用である 9月28日(金)放送

Nomoto2_r 西村 今月のゲストは筑波大学大学院生の野本靖さんです。野本さんは香南市夜須町の出身です。大学では都市計画を勉強され、漁村の研究もされています。鉄道や自転車に興味をもたれています。
 ブログ「今日も自転車は走る」やサイト「土佐の高知の鉄道」なども開設されています。自転車の効用や鉄道や路面電車に大変興味を持たれています。

 今回のテーマは「高知の元気の源は地方公共交通の最大活用である」ということでお話をお聞きします。
 野本さんはブログなどで「ファアスト風土化」に警鐘を鳴らされ、高知市の中心市街地の衰退を心配されています。
しかし未だに商店街や行政は商業施設を市内中心街にこしらえ、駐車場を増やそうとしています。ファアスト風土化は車社会と関係があるのでしょうか?

Ion1 (イオン高知。2800台の駐車場を設置している)

野本 ファスト風土化と車社会化は切っても切れない関係にあります。高知でも、郊外店舗の乱立が激しくなったのは、高知自動車道が高知インターまで伸びてきたときと一致しています。北環状線などの幹線道路が整備されてから、一気に様々な店舗が進出し、
その象徴は、2000年末のイオンショッピングセンターの開業です。
 何もない農地や荒地に道路を造って、それに沿った土地を利用してこそ、広大な駐車場を構えるロードサイド店が出店可能になります。
そして遠隔地からの配送を可能にする高速道路の存在も見逃せません。

Noichiminami (全国何処でもある風景です。写真は香南市野市)

ロードサイド店+車社会で地域も人々のライフスタイルも均質化し画一化します。これは、高知のアイデンティティを揺るがしかねない事態です。安い、便利だと言ってこの傾向に無批判に迎合するのは危険です。

西村 では高知の都市(とくに中心街)を日常的に元気にする為にはどうすれば良いのでしょうか?中心街に居住者を増やすことも必要であると思いますが。

野本 中心市街地も、商業施設や駐車場の整備を要求するなどどうも他力本願な体質が強いようですね。自分たちで街を魅力的にしようという意志があまり感じられないというか。旧態依然のことをやっていればだれも街には集まりません。
 ただ郊外の真似をしても、再生は難しいでしょう。駐車場を整備するなど自動車に対応させることばかりの行き着く先は、郊外と変わらない、自動車が氾濫した画一化した空間です。

郊外とは完全に差別化した街を目指してこそ、元気になると思います。
私も良くは分からないですが、人々が安心して歩け、多様な文化ある、出会いがある、個人の営みがある、新たな発見があるような街、例えば、東京で言えば吉祥寺、西荻窪、自由が丘などの特色のある街が、参考事例になりそうです。いろんな文化人が、街中に住んでいてあちこちにその痕跡があって、それが街の個性を生み出しています。

Nomuraichi (日曜市)

 高知では、日曜市やひろめ市場、大橋通り商店街など、高知の特色ある部分も多いです。それらと現代的なもの、新しい高知の文化などが上手に共存するようなまちづくりが近道です。またやる気のある人が開店できるように支援することも必要でしょう。

 アメリカのポートランドなんかでは、ただの倉庫街だったところが、10年ほどで商店が集積し、若者や観光客も集るスポットになったパール地区やそれに近接するノブヒル地区などがあります。多くは地元の個人店であるそうです。短期間に、街を活性化できるという良い実例ですね。

西村 高齢者は車社会で置き去りになります。高齢者にやさしい街とはどのような街なのでしょうか?障害者も出かけれるようになりますか?

野本 交通権という考え方があります。自由に移動する権利は、人々の基本的な人権の一つだという考え方です。
車社会はそれに対応しません。地方では車をもてない人、運転できない人にとっては、極めて暮らしにくくなっています。誰かの車に乗せてもらう移動では、自分の意志による移動とは程遠いものです。
バスなども運賃が高くて少ない年金生活ではそうホイホイ乗れるものではありません。

高齢者にとってやさしい街とは、歩いていける範囲か、ちょっと自転車に乗っていける範囲に商店街や銀行、病院などの施設がある街ですね。そして、店主や知り合いの人とも会って、気軽に会話できる街。さらに銭湯なんかがあるとよりいいですね。
 そして、遠くに行く場合でも、安価に快適に利用できる公共交通があることです。これは高齢者だけでなくだれにとってもやさしい街を実現する必須要素と言っても過言ではないでしょう。
障害者の方にとっても、今の交通サービスではまだまだ厳しいでしょう。こちらの対応も真剣に考えなければなりません。

Hartrum1 (バリヤフリーも必要です。写真は「土佐電鉄の電車とまちを愛する会」の浜田光男(てるお)さんに提供いただきました。

低床床電車(土佐電鉄)ハートラムです。)

西村 環境にやさしい都市と、人にやさしい都市は同時に可能なのでしょうか?矛盾はしないものでしょうか?

野本 これは、全く矛盾しないと思います。便利な生活に制約が出る、我慢しなければならないことが増えると思われるかもしれません。しかし、不便ということは、見方を変えると、それ以前の状態と考えられます。
それは、以前はその状態が当然のことであったわけです。

 もちろん生活を不便にすることなく、環境にやさしい都市は、実現できます。
郊外への拡散を抑えたコンパクトシティは、エネルギー消費を低く抑えることが出来るばかりか、ヒューマンスケールの街でもあります。便利でありかつ持続可能で安定的な地域社会です。
 過剰な車社会は、地球環境に深刻なダメージを与えるだけでなく、騒音、子供の遊び場の減少など生活環境も破壊していますし、
かえって不便になったことも少なくありません。交通渋滞はその典型でしょう。スプロール化により、行政コストの圧迫にもつながり、地球環境、地域環境。財政の側面からトリプルパンチで負の部分を露呈しているのが、過剰な車社会です。
Zitennsya2
西村 野本さんは自転車の最大活用も言われています。自転車の効用はどのようなところにあるのでしょうか?

野本 自転車は、当然ながら人力のみで動かしますので、呼吸以外でC02を排出しません。窒素酸化物などの排出は皆無です。騒音、振動公害も発生しません。さらに走っても停まっても場所をあまりとりません。

経済的な負担が少ないことは、個人にとって大きな効用です。移動自体はどこまで行ってもタダ、購入費用も、修理費用も自動車に比べて、圧倒的に安上がりです。適切なメンテナンスをすれば滅多に故障しません。それでいて、歩くより楽に速く移動できます。究極のコストパフォーマンスを誇る交通手段です。
健康維持にも大いに貢献します。車に依存した生活は、滅多に運動しなくなります。これでは肥満などの原因になります。これに加えファーストフードを好む食生活は、著しく肥満体質を増やします。
 自転車ツーキニストの人は自転車通勤を始めてから半年で83キログラムの体重が、68キログラムまで下がったそうです。

ドアツウドア、いつでも好きなときに使える随時性は、自動車と全く同じです。
ドアツウドアに至っては、自動車を遥かに凌駕しています。駐車場を探し回ったりする必要もないですし、何か気になるものがあったらすぐに止まることができます。出庫の手間を考えれば3キロ程度の移動なら自転車のほうがむしろ速い位です。

また、交通事故の減少も大きな点です。自動車が関わらない限り滅多に死傷事故は発生しません。それでも事故が発生していますが、多くは飛び出し、逆走、歩道爆走などのデタラメなマナー、ルール無視に起因しています。

天候に左右される、長い距離を走ると疲れる、大きな荷物が積めないなどの短所はありますが、あくまでも短所であり、害悪ではないことが重要です。自動車の場合の欠点といえば、害悪をもたらすものが多いのを考えるととるに足らない些細なことだと思います。

西村 高知の公共交通を最大活用して「環境宣言都市」を名乗る。二酸化炭素を削減する。それを世界に宣言するということなのでしょうか?
 いまより車の通行量をおおよそ何%減らせればそれが可能なのでしょうか?

Sawayama422m_r (高レベル放射性廃棄物反対候補が圧勝した東洋町長選挙

野本 今年に入って東洋町で高レベル放射性廃棄物最終処分場を建設する問題が、発生しました。反対派の候補が、当選し東洋町からは、一切この話はなくなりました。しかし、現実には原子力発電を続ける限り核のゴミは発生しますし、事故のリスクも付きまといます。本当の解決は、原子力発電の廃止に他なりません。

反対したからには、環境に優しい地域づくりを本気で推進するべきでしょう。
「我々は、原発などに依存しなくてもやっていけるんだ」と、いうことを実践すれば、国際的な評価も高まります。
世界の環境首都と呼ばれているドイツのフライブルクも、きっかけは70年代の原発建設計画が発端です。反対するからには、自分たちも環境に優しい生活を心がけなければと意識があってのことです。

環境政策に真剣に取り組み、CO2排出を激減させた都市となれば、世界で高知を見る目は変わります。
世界的に有名になると観光客も増えますので、高知県、四国の活性化につながります。この場合環境だけでなく他の取組みも必要ですが。
「エコで発信していく、食っていく」くらいの気構えがあってもいいくらいです。
どうせそのままほっておいても没落する一方だから、ここで一発大きく賭けようかという挑戦してみてもいいのでは。

高知は、山がちで平地が少ないためもともと線状に居住地がまとまっています。高知県東部地区も旧安芸線の駅を中心に街が発達した
経緯があるなど、意外と公共交通を活用した交通体系への転換は、抵抗無く出来るかもしれません。
なんといっても奈半利から宿毛まで鉄道が通じていますし、高知市内には路面電車があります。これを活用しない手はありません。鉄道路線を頂点に、フィーダー線にバス路線を位置づけた公共交通整備、駐輪場など自転車利用のサポート、パークアンドライドの整備、カーシェアリングの推進、啓発などによる意識改革などを組み合わせた、
交通政策を進めれば、高知都市圏で自動車利用を7~8割削減することも不可能ではないと思います。
もちろん市民の理解を深めること、合意形成を実現することなどは必須です。

西村 地方公共交通での高知の特色、あるものを挙げてください。それをどう活用すれば高知は元気になれるのでしょうか?
最後にまとめをお願いします。

Aakisen01_3 (かつての安芸ー高知線) 

野本 なんと言っても、土佐電鉄の路面電車でしょう。現存する日本最古の路面電車でありますし、あのクリーム色の車体に、前面がカーブした
青のライン、腰部のあずき色、屋根の緑色の塗装で、丸みのあるスタイルの車両が、目抜き通りの中央を走る姿は、高知の街と一体化しています。テレビなどで高知が出てくる場合、路面電車が走る姿は必ず出てきますね。

しかし、車社会化とそれに伴う郊外化の影響で、年々路面電車もバスも乗客が減り続けています。最盛期の3分の1以下に減っています。
とはいっても、今高知市内で最も便利な交通機関は路面電車です。本数も多く、路面から簡単に乗れる、市内の拠点を結んでいるなど便利な要素はいくつもあります。高齢者の方にとっては、人気が高いみたいです。

今ある、路面電車の情緒や味わいを尊重しつつ、直通運転などで使いやすい交通機関に再整備していくことが、高知を元気にする秘訣です。現代的なLRTと古典的路面電車の共存といったところでしょうか?

また、ごめんなはり線と予土線も特色がある路線でしょう。どちらも車窓からの眺めは抜群です。それらの地域公共交通を、通勤、通学、通院、買い物、文化施設へのアクセスなどの生活に密着した生活路線として、さらにビジネスや観光にも最大限活用すれば、自動車の呪縛から脱出でき、そこに暮らす人々ももっと生き生きとしてくると思うのです。ひょっとしたら、世界一住みやすい高知県と評価される日も来るかもしれません。

Horizume

(野本靖さんから関連情報をいただきました。)

<ポートランド市公式サイト>
http://www.travelportland.com/index.html

http://www.travelportland.com/index.html

http://www.travelportland.com/japanese/home.htm

http://www.travelportland.com/japanese/home.htm
(日本語サイト)

http://www.bund.org/opinion/1136-5.htm

「高速道路無料化案」では、日本はかえって悪くなる
湯川真一さんの評論ですが、高速道路無料化は、完全に時代錯誤であり、地球温暖化防止という観点からも逆行する。世界の交通政策は新たな次元に突入しており、鉄道などの公共交通機関の利便性向上を図っている。と説明されています。最後に、ポートランドやサンフランシスコの道路計画を変革させた住民運動について述べられています。

Kouzigo2sin (新堀川工事完成予想図)
今、高知でも新堀川がクローズアップされています。高知で脱クルマ社会を推進していくならば、新堀川の暗渠化を中止に追い込むことがまず最初に突破すべき関門であるのは間違いないでしょう。都市のアメニティや景観保全を重視する都市計画へのパラダイムシフトの観点からも見逃せません。

<ポートランド市公式サイト>
http://www.travelportland.com/index.html
http://www.travelportland.com/japanese/home.htm
(日本語サイト)

「高速道路無料化案」では、日本はかえって悪くなる

湯川真一さんの評論ですが、高速道路無料化は、完全に時代錯誤であり、地球温暖化防止という観点からも逆行する。世界の交通政策は新たな次元に突入しており、鉄道などの公共交通機関の利便性向上を図っている。と説明されています。最後に、ポートランドやサンフランシスコの道路計画を変革させた住民運動について述べられています。
今、高知でも新堀川がクローズアップされています。高知で脱クルマ社会を推進していくならば、新堀川の暗渠化を中止に追い込むことがまず最初に突破すべき関門であるのは間違いないでしょう。都市のアメニティや景観保全を重視する都市計画へのパラダイムシフトの観点からも見逃せません。

ポートランドの自転車事情については以下のサイトが詳しいです。

自転車交通のNPO

公的な市民参加機関

ポートランドのなぞ

公共交通の活用事例:ポートランド編

 富山で昨年新規開業した富山ライトレールの写真がございます。
http://yassiblog.cocolog-nifty.com/blog/2006/12/post_497b.html

カールスルーエに関しては、以下のサイトが写真も説明も豊富で大変分かりやすいです。

<独墺四都市紀行>
http://www16.plala.or.jp/caw99100/europa/2/index.html
http://www16.plala.or.jp/caw99100/europa/3/index.html
http://www16.plala.or.jp/caw99100/europa/3/karlsruhe.html

ポートランドについても、参考サイトをリンクしておきます。

<ポートランド市公式サイト>
http://www.travelportland.com/index.html
http://www.travelportland.com/japanese/home.htm(日本語サイト)

<Tri-Met Officall page>
ライトレールやバスの運営組織であるトライメットのオフシャルページです。
http://www.trimet.org/index.shtml

ライトレールの写真多数あり。
http://world.nycsubway.org/us/portland/max.html
http://trolley.net/annex/trimet.html
http://usarail.hmc5.com/city_portlandor_jp.htm
http://www.jterc.or.jp/koku/ht-report/or-st/oregon.htm

個人ページなどのリンク。

<持続可能なアーバンライフ>ポートランドより発信

<シアトルウオーカー:サンディがお届けするホットなシアトル情報>

<渡辺葉さんが語る「木漏れ日、炭火焼のピッツァ、魔法の森のポートランド」>

<渡辺葉のポートランド通信>

 カールスルーエやポートランドについては、以下のページをリンクしておきます。写真などもあり、いろいろと参考になるかと思います。

<わだらんの欧州旅行記>
.

<トラムと車が共存する未来>

<路面電車の課題と海外の事例>

<you tube映像>
http://jp.youtube.com/watch?v=H3tP0nsyW1c

http://jp.youtube.com/watch?v=GwBlF75Xtjo

625aki (かつての安芸線ー土佐電鉄)

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2007年9月16日 (日)

ごめん・なはり線の土佐電鉄直通運転のメリットは

Nomoto3_r

西村 今月のゲストは筑波大学大学院生の野本靖さんです。野本さんは香南市夜須町の出身です。大学では都市計画を勉強され、漁村の研究もされています。鉄道や自転車に興味をもたれています。
 ブログ「今日も自転車は走る」やサイト「土佐の高知の鉄道」なども開設されています。自転車の効用や鉄道や路面電車に大変興味を持たれています。

 今回のテーマは「ごめん・なはり線の土佐電鉄直通運転のメリットは」ということでお話を伺います。

 現在は、高知市から奈半利へ行く場合は、JR高知駅まで行き、JR四国経由でごめんまで行き、そこから先はとさくろしお鉄道で奈半利まで行くことになります。直通運転されています。野本さんは高知市街を走る土佐電鉄の路面電車がそのまま奈半利まで行く。奈半利から高知市街の路面電車へ走れば良いと言われています。
どのようなメリットがありますか?

Yasu (やす駅付近)

野本 まず最初に、乗り換えなしで高知の中心市街地とを結べることです。現在では、土讃線高知駅まで乗り入れていますが、そこから中心市街地に行く場合、路面電車に乗り換えるか徒歩で行くかでやや不便です。県庁方面に行く場合は、高知駅―枡形便があるものの本数が少ないので、はりまや橋で乗り換える必要があります。運賃も高知駅までの運賃と路面電車の市内区間190円が加わり割高につきます。

 それが、後免町から土佐電鉄線に直通となると乗り換えなしで中心市街地に行けます。市街地では、こまめに停まるので、降りたら目的地は目の前と、大変利便性は上がります。知寄町から鏡川橋までは、各駅にとまるわけですから電停を下りたら目的のお店はすぐ目の前ということを実現できます。

 2番目にごめんなはり線沿線から高知市街への到達時間も短縮します。現在、後免駅から高知駅までは、普通列車で最低でも17分、行き違い待ちがあると25分程度はかかります。そこから路面電車に乗り換えると、はりまや橋まで最低でも10分程度はかかります。そうすると、後免からはりまや橋まで約35分ということになります。一方、土電電車は現行でも、後免町~はりまや橋を35分で結んでいます。
知寄町以東の郊外区間を高速化改良したりして急行運転ができるようにすれば、15~20分で結ぶことが可能になります。およそ15分の短縮となります。

 次に、ごめんなはり線の運行本数を増やすことが、可能にできるでしょう。現在の、土讃線直通は、土讃線も単線で特急列車も走っており、線路容量は限界に近いです。そのため、なはり線から土讃線にすべての列車が直通しているわけではありません。
一方、土佐電鉄は、後免町から複線です。すべての車両を繁華街まで問題なく直通が可能になります。
 ごめんなはり線内の現在のダイヤは、一時間に1~2本ですが、これを4~5本に増発して、一挙に利便性を向上させるべきだと
考えています。

そして、土佐電鉄線、ごめんなはり線とも路線の活性化を図れるというメリットがあります。逆に、JR土讃線が寂れるというかもしれませんが、これは公共交通利用のパイ自体を増加させることにより解決すべきでしょう。

 これが最も大事なことですが、クルマ依存社会からの脱出を図るために都市計画や交通計画との関連を明確化する必要があることです。
 そのためには、路面電車、鉄道、バスなどの各種交通機関の役割分担をはっきりさせなければなりません。バラバラに機能している交通機関を再構築し総体的なシステムとして機能させる。これができてこそ初めてLRTの称号を与えられるといってよいでしょう。

 土佐電鉄を介してごめんなはり線とJR土讃線をまず、高知都市圏の基幹交通として位置づける。そしてバス路線のネットワークを相互補完する形で、構成するというふうにしたらよいと思います。西方面も朝倉あたりからJR土讃線にも直通運転を検討すべきでしょう。また、中心市街地活性化の手段としても有効に機能します。なるべくクルマを使わない高知メトロポリタンエリア」を目指す上で、もっとも核となるプロジェクトになるでしょう。

Hartrum1 (路面電車は「最先端」の交通手段かもしれません。写真は「土佐電鉄の電車とまちを愛する会」の浜田光男(てるお)さんに提供いただきました。

低床床電車(土佐電鉄)ハートラムです。)

西村 奈半利から高知市街まで直通運転と言うことになりりますと、ディゼルカーではなく電化しないといけないと思います。電化した場合の費用はどの程度かかるでしょうか?

野本 当然、電化は必要だと思います。専用のディーゼルカーやハイブリット車両を造るという選択肢もないわけではないですが、
市街地で排気ガスを出すとなると、評判が悪いですし、性能や乗り心地も電車にはかないません。
電化する方がベターです。電化の費用ですが、だいたい1km1億円といわれています。なはり線は42kmですので、40~50億円くらいはかかるでしょう。

Aakisen01 (土佐電鉄安芸線。写真は野本靖さん提供)

西村 今から30年ほど前までは、土佐電鉄が高知市から南国市ご免を経て、夜須から安芸市まで運転していました。
 安芸市から通勤通学の人達が高知へ来ていました。それを今の時代に再現するのでしょうか?

野本 その通りです。かつての安芸線では、市内から手結や安芸まで路面電車が直通便していました。市街地のみを走る運行にとどまらず、高知の市街地から40km近く先の安芸までを乗り換えなしに結んでいました。
 この取組みは、現在注目を浴びているLRTに通ずるものがあったと思います。郊外でのスピーディーな運行、連結運転による柔軟な需要への対応、当時は極めて斬新だった直通用車両のスタイルといい極めて先進的な取りくみでした。
 それを、この現代にグレードアップした形で復活させるということです。
速度や車両のみならず、バスとの連携、運賃面や情報提供面で、安芸線時代よりはとことん使いやすい鉄道、
使いたくなる鉄道を目指すべきです。また、東京などでの地下鉄と郊外私鉄の乗り入れが盛んですが、その路面電車バージョンと考えることもできます。

西村 朝夕のラッシュ時に知寄町あたりで見ていますと、自動車は1人で約7メートルの道路スペースを専用します。
100台で700メートルの渋滞です。路面電車なら1両で60人は運送可能です。2両の路面電車で100人は運べます。交通渋滞の緩和と,廃熱防止になるし、環境対策にもなりますね。パーク&ライドも必要であると思われますが。

 その通りです、道路では、自動車があまりにも偉そうにしています。自転車を歩道に追いやり、歩行者に平気でクラクションを鳴らす・・・。
公共交通を活用するということは、自動車利用を最小限にする有効な手段ですね。
それは、渋滞緩和、大気汚染や騒音の減少など様々なメリットをもたらします。
パークアンドライドは、公共交通と自動車の双方の利点を生かした施策でもっと拡充してもいいと思います。

西村 直通運転の場合、現在の車両でいけるのでしょうか?特別車両ということになると地方の鉄道会社には余力はないとは思いますが?
運転手の技量などもあり対応はすぐにできるのでしょうか?

Nishibuneki (ごめんなはり線西分駅)

野本 まず、JRやごめんなはり線で使用している大型の車両を、市内に直通させるのは無理です。一方、現行の路面電車では小さすぎて用事にならないでしょう。中間サイズで、鉄道車両と同等の性能を持つ、専用車両が求められます。
当然ながら、カツカツで経営している事業者単独での導入は、不可能です。ハートラムも事業者の負担がままならないので試しに導入した1編成で止まっています。
公的負担は避けられないでしょうが、行政や市民の合意を得ることがあれば実現できるかと思います。

 事故を起こして突如運休になった京福電鉄ですが、運休により渋滞が激しくなるなど、鉄道の重要性に住民が気づかされ2年後にえちぜん鉄道として再出発しました。そこに公的資金が100億円投入されていますが、地域住民の合意がなされた
結果です。また、直通運転にあたって保安装置や運転士の訓練、法律の問題などクリアすべきハードルはいくつも存在します。
 それらをあきらめずに一つずつ解決していってこそ直通運転は実現します。

西村 高知県庁に「交通局」をこしらえぐらいの気構えがないと運営はできないと思います。高知県庁などと接触してみた様子はいかがでしたでしょうか?

野本 運賃体系の統合や共通のパスを発行するとなれば、それらを一元化する組織を構築しなければなりません。
異なる路線、事業者、モード同士でもあたかも一つの路線であるかのようにするには、それらを統合する交通局の存在は必須です。ドイツなどでは、各都市圏で交通連盟が結成され、ドイツ鉄道、トラム、バス、地下鉄などで共通したしくみで利用できるようになっている都市が数多くあります。

西村 県内メディアの反応はいかがでしょうか?打診はされたのでしょうか?興味をもつ記者はいましたか?。

野本 これは、よくわかりません。メディアとの接触はまだですし。

*野本靖さん作成の「直通運転の路線図」をPDFファイルにしてあります。

「network.pdf」をダウンロード

http://tosarailway.up.seesaa.net/image/1Al1Ab1Ag1A1A1A5B1AN.JPG

(参考) 野本靖さんより以下の都市の事例についてのホームページ記事の紹介がありましたので、掲示させていただきます。

さらに参考サイトを少し追加します。
まずは、前回のコメントで、リンクが上手くいかなかった部分から。

<ポートランド市公式サイト>
http://www.travelportland.com/index.html
http://www.travelportland.com/japanese/home.htm
(日本語サイト)

「高速道路無料化案」では、日本はかえって悪くなる

湯川真一さんの評論ですが、高速道路無料化は、完全に時代錯誤であり、地球温暖化防止という観点からも逆行する。世界の交通政策は新たな次元に突入しており、鉄道などの公共交通機関の利便性向上を図っている。と説明されています。最後に、ポートランドやサンフランシスコの道路計画を変革させた住民運動について述べられています。
今、高知でも新堀川がクローズアップされています。高知で脱クルマ社会を推進していくならば、新堀川の暗渠化を中止に追い込むことがまず最初に突破すべき関門であるのは間違いないでしょう。都市のアメニティや景観保全を重視する都市計画へのパラダイムシフトの観点からも見逃せません。

ポートランドの自転車事情については以下のサイトが詳しいです。

自転車交通のNPO

公的な市民参加機関

ポートランドのなぞ

公共交通の活用事例:ポートランド編

 富山で昨年新規開業した富山ライトレールの写真がございます。
http://yassiblog.cocolog-nifty.com/blog/2006/12/post_497b.html

カールスルーエに関しては、以下のサイトが写真も説明も豊富で大変分かりやすいです。

<独墺四都市紀行>
http://www16.plala.or.jp/caw99100/europa/2/index.html
http://www16.plala.or.jp/caw99100/europa/3/index.html
http://www16.plala.or.jp/caw99100/europa/3/karlsruhe.html

ポートランドについても、参考サイトをリンクしておきます。

<ポートランド市公式サイト>
http://www.travelportland.com/index.html
http://www.travelportland.com/japanese/home.htm(日本語サイト)

<Tri-Met Officall page>
ライトレールやバスの運営組織であるトライメットのオフシャルページです。
http://www.trimet.org/index.shtml

ライトレールの写真多数あり。
http://world.nycsubway.org/us/portland/max.html
http://trolley.net/annex/trimet.html
http://usarail.hmc5.com/city_portlandor_jp.htm
http://www.jterc.or.jp/koku/ht-report/or-st/oregon.htm

個人ページなどのリンク。

<持続可能なアーバンライフ>ポートランドより発信

<シアトルウオーカー:サンディがお届けするホットなシアトル情報>

<渡辺葉さんが語る「木漏れ日、炭火焼のピッツァ、魔法の森のポートランド」>

<渡辺葉のポートランド通信>

 カールスルーエやポートランドについては、以下のページをリンクしておきます。写真などもあり、いろいろと参考になるかと思います。

<わだらんの欧州旅行記>
.

<トラムと車が共存する未来>

<路面電車の課題と海外の事例>

<you tube映像>
http://jp.youtube.com/watch?v=H3tP0nsyW1c

http://jp.youtube.com/watch?v=GwBlF75Xtjo

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2007年9月 9日 (日)

高知はポートランドやカールスルーエのような特色のある都市になる

Nomoto3_r

西村 今月のゲストは筑波大学大学院生の野本靖さんです。野本さんは香南市夜須町の出身です。大学では都市計画を勉強され、漁村の研究もされています。鉄道や自転車に興味をもたれています。
 ブログ「今日も自転車は走る」やサイト「土佐の高知の鉄道」なども開設されています。自転車の効用や鉄道や路面電車に大変興味を持たれています。

 今回のテーマは「高知はポートランドやカールスルーエのような特色のある都市になる」でお話をお聞きします。

アメリカのポートランド市。路面電車を市内中心街に乗り入れ、トランジットモールをこしらえ、中心市街地の活性化に成功したようです。自動車交通の先進国であるアメリカでなぜポートランドは上手く行ったのでしょうか?

Fukui10 (福井市は郊外電車と路面電車が乗り入れをしています。写真は「土佐電鉄の電車とまちを愛する会」の浜田光男(てるお)さんに提供いただきました。福井鉄道。広島とは反対に、鉄道用車両が路面電車に直接乗り入れています。)

野本 話は1970年代にまでさかのぼります。ちなみにポートランドにも路面電車はありましたが、1950年代にいったん廃止されました。「1990年計画」で、当初16本の高速道路(フリーウエイ)の建設が計画されましたが、すべて反対運動にあい、法定闘争に持ち込まれ3本以外はすべて中止されました。

 そのとき同時に政策は大きな転換を行いました。それはトランジット(公共交通機関)を整備する、トランジット整備とリンクした都市開発を実施する。駐車場をこれ以上新設しないという、まさに交通のパラダイムシフトと言ってもいい内容でした。

 バス路線の整備はそのときから始まっていますが、活気的な転換は1986年の「MAXライトレール」の開業です。ダウンタウンと郊外のグレシャム市を、鉄道路線で結ぶ鉄総路線が開通しました。
 この鉄道は、かつての路面電車とは異なり、ダウンタウンでは歩道から気軽に乗れる市外電車。郊外に出ると駅間も長く高速運転もする郊外電車と2つの機能を融合した形になっています。1998年、2001年、2004年にも延伸され、現在さらに新路線を建設中です。それとは別に、市内電車(もちろんかつての電車より近代的なスタイルで)ある[ストーリーカー」も市が独自で整備して、大きな沿線開発効果を上げました。

 一連の取り組みは連邦レベルでの手厚い補助もさることながら、都心部無料などのユーザーサイドの政策、中心市街地を魅力的にする努力(ショーウィンドー、アートボーナスなど)。都市の成長管理などの明確な方向性をもった都市計画のビジョンの賜物です。

Kumamoto11 (自転車を車内持ち込みOKの路線もあります。写真は「土佐電鉄の電車とまちを愛する会」の浜田光男(てるお)さんに提供いただきました。熊本電鉄の車両は自転車持込が認められています。)
西村 ドイツのカールスルーエは「市内のトラムをネットワークを拡充するためにドイツ国鉄網に乗り入れて広大な路線網を築いてきました。」と野本さんはレポートされています。具体的にはどういうことでしょうか?

野本 カールスルーエのトラムは土佐電鉄の路面電車よりも27年前の1977年に開業しました。開業以来廃止されずに路線を維持してきましたが、15年前の1992年に大きな快挙を成し遂げました。それはトラムのネットワークを低コストで拡大する為に、ドイツ国鉄(当時)へ直通し、国鉄の旅客鉄道と路線の共用を実現しました。

 これは並大抵の熱意ではなかったそうです。ドイツなどでは地域の交通を担う電車類(トラム、地下鉄など)と長距離を走る列車(ヘビーレール)との性質は、同じ鉄道と言っても隔たりは相当なものです。
 何しろ鉄道には、長編成の国際特急列車、さらにドイツ新幹線ICEも走っています。そこに市内からトラムを走らせることは、レールの幅が同じでも日本で路面電車をJR在来線に直通させるよりも、容易なことではないと考えられます。

 カールスルーエはそれを利便性向上のためにそれを実現したのです。電圧の違い(路面電車・直流750V、ドイツ鉄道・交流1500V)、信号系統、保安装置など技術的な問題、運行上の問題、法律の問題、運転士の訓練など。様々な解決すべき課題はありましたが、それを逐一クリアして直通運転を実現しました。

 結果は大成功で、郊外から乗り換えなしで都心へのアクセス効果、本数の増加、安価な料金体系と相まって以前の5~10倍に乗客数が増えました。それは当然ながら中心市街地の活性化にも貢献しました。1992年以降、現在まで直通運転を順次拡大しています。その成功は「カールスルーエモデル」と呼ばれ、カールスルーエを一躍有名にしました。
 この取り組みは、ザールブリュッケンやフランクフルトなどドイツの都市のみならず、フランスや日本(熊本電鉄と熊本市交通局が計画中)にも広がっています。

 このカールスルーエモデルは高知でも応用できそうです。かつて安芸線で、規模、スケールも全くかないませんが、路面電車が安芸まで直通していました。ごめんなはり線が開業し、高知県東部に鉄道が復活した今、それを現代にグレードアップした形で復活させることは大いに意義のあることでしょう。

西村 野本さんは「環境保護を真剣に地方都市が考えるのであれば、自動車使用量を減少させないといけない。」と言われています。その目標を達成するための方法手段を教えてください。

野本 これは、ちょっと勉強不足なのですが、手段はいくつもあります。クルマは環境に悪いので控えるべきだという哲学だけでは、まず減らせません。政策での裏づけや、仕組みを整備することが重要になってきます。

 一つ目に、自動車に替えて利用してもらえる、公共交通の整備や、自転車利用環境の構築です。そうでないとなるべく動くなということになってしまいます。ハード面ではなく、料金や情報面のソフトの整備も鍵を握っています。
 二つ目に、ロードプライシングや駐車料金の値上げ、乗り入れ制限、違反取締りの強化など自動車利用を不利にする方法。利便性を制限するのでいかに納得してもらうかが重要です。
 三つ目にTOD(Transit Oriented Development)と呼ばれる公共交通を重視した開発方法です。他にも色々あります。

Ion1 (郊外型大型店舗は町の姿を壊してしまいます。)

西村 キーワードに「コンパクトシティ」があります。「スプロール」と対極の都市づくりの方法であると思います。高知市は今後の都市づくりはコンパクトシティで行くべきでしょうか?

野本 現在は、商業施設は郊外に脈路なくバラバラに拡散しています。公共施設も一部が公共交通でアクセスが難しい郊外に立地しています。
 高知市は、もともと東西に長い形態をしていますから、必ずしも、超コンパクトシティである必要はないと思います。公共交通の軸線上に、再活性化を図る線上にコンパクトシティのほうが、向いているでしょう。

西村 最近は「カーシェリング」という言葉もよく耳にします。具体的にはどうすることなのでしょうか?国内での事例はありますか?また地方都市にも広がる可能性はありますか?

野本 「カーシェアリング」とは、数人から数千人と規模は様々ですが、自動車を共同で管理し離床する仕組みです。例えば協会に加盟し、年会費などの会費を払う。利用のたびに、車種や走行距離、利用時間により使用料を払うというシステムです。レンタカーに似ていますが、日常生活でも気軽に利用できるところが大きな相違点です。

 これは無駄な自動車利用を押さえる上で大変有効です。現状では、いったん自動車を保有してしまうと、それを最大限に使ったほうが安上がりなるので、公共交通機関が利用できても自動車を無理に使ってしまいます。購入、所有に高くつき、利用にかかる費用が比較的安いですから。

 カーシェリングにするとそのような無駄な利用ををなくすことができます。利用料金にはガソリン代以外にも、購入費、管理費用、整備費用が含まれた形ですので、それなりに割高につくでしょう。だから便利な鉄道が並立しているのに車で行く、ちょっと500メートル先にタバコ買いにクルマで行くなんて利用は、まず考えられません。
 例えば、休暇で家族旅行で使う。大きな荷物を運ぶ。山岳地など鉄道でいけない場所に行くときなど、自動車の利点を大いに発揮できるときにこそ、自動車に大活躍してもらうことが可能になります。

 利用者にとっては、用途(利用人数、荷物の種類、目的地)に応じて、適した車種を選択できる、賢く使えばマイカーを保有するよりずっと安上がりになるなど、明確なメリットがあります。現状でも、家庭でも2台目の自動車の代わりになることはできると思います。

 質の高い公共交通機関、自転車利用のサポートで、大部分のニーズを満たし、残りの部分をカーシェアリングでまかなうとすれば、大幅に自動車利用は削減できます。
 日本では横浜市で実験的な取り組みがあるみたいです。高知県ではとくに経済的メリットが大きいかもしれません。

Stus2 (アメリカセントルイス市にあるユニオンセテーション。かつての大陸横断鉄道の駅跡は商業施設に。実物の機関車が展示されていました。)
西村 高知に「路面電車博物館」は必要ではないでしょうか。もしくはバスの博物館もふくめて地方公共交通博物館もこしらえたら良いと思いますが。高知県民の「心のふるさと」になるのではないかと思います。

野本 確か[土佐電鉄の電車とまちを愛する会」の浜田光男さんも提案されていました。路面電車の博物館はどこにもないですから。こしらえる意義は大いにあるでしょう。そこでは日本の路面電車のみならず世界のLRTの写真や模型、土佐電鉄の歴史のみならず、運転シュミュレーターも置いたらいいですね。できれば、各地で引退した車両も展示する。常時、実物の車両を体験運転できるとなれば、アンパンマンミュージアムに匹敵する集客装置も夢ではないと思います。

 バスのほうも、最近、高知県交通が旧型モノコックバスのうち1台を動態保存することを決めました。土佐電鉄もボンネットバスがありますし。旧型バスがまだ残っています。ここ最近で激減しましたが。
 ただ博物館は現実のインフラではないので、肩肘はらずに気軽に考えていきましょう。

西村 市民の合意形成が必要であると思います。中学生に説明するとすれば「どのような都市政策」を実行すると説明すればいいのでしょうか?

野本 これは、正直どう応えたらよいか難しい。あえて苦し紛れですが、[自分達が住んでみたい。誇りに思える、外からも行ってみたいと思われる街にする。」また、[サスティナブルな環境調和を目指す都市づくりを実行する。」と説明すればよいかと思います。
 「もちろん、街の姿はあなたひとりひとりの行動の集積です。一緒に街をつくっていこうじゃないか!」とこういうあたりでしょうか。

Anpanman5 写真は「土佐電鉄の電車とまちを愛する会」の浜田光男(てるお)さんに提供いただきました。アンパンマン電車です。

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2007年9月 3日 (月)

車を捨てて街を元気に

西村 「けんちゃんのどこでもブログ」今月のゲストは筑波大学大学院生の野本靖さんです。野本さんは香南市夜須町の出身です。大学では都市計画を勉強され、漁村の研究もされています。鉄道や自転車に興味をもたれています。
 ブログ「今日も自転車は走る」やサイト「土佐の高知の鉄道」なども開設されています。自転車の効用や鉄道や路面電車に大変興味を持たれています。

 今回のテーマは「車を捨てて街を元気に」ということでお話を伺います。

 野本さんは「車社会に地方都市が無自覚に依存しすぎると都市が拡散し、
特色のない都市になり衰退する。」「ファースト風土主体のロードサイド店舗は全国何処にもあるし都市としての魅力はない」
と言われています。高知市も野市あたりもそういう街になりつつあるのでしょうか?

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野本 そうですね。高知でも野市でも幹線道路沿いに、様々な店舗が立ち並んでいます。
巨大ショッピングセンター、ファストフード店、紳士服、サラ金、パチンコ、カラオケ、ファミレス、ラブホテル、レンタルビデオ店、コンビニ、果ては葬儀屋までと、色々あります。全国の、幹線道路を走るとお決まりのようにこの光景が繰り返し出現します。岩手だろうが、熊本だろうが、群馬だろうがどこでも同じような道路と、店舗群が見られます。本当に、ファストフードの一律のシステムのように、同じような光景です。
これでは、本当にここはどこかと思ってしまうくらいです。確認できるのは標識の地名だけですね。
余談ですが、ツーリングでは街中は旧道を走らないと、旅の意味すら失われてしまいます。

 さて、ここ10年ほどでその傾向に拍車がかかりました。中心市街地に活気があった高知市でも、西武が閉店、映画館もすべて閉館するなど中心市街地の衰退傾向が激しくなりました。かわりに、イオンを中心として北環状線沿いは、活況を呈しています。
今までに考えられなかった、ライフスタイルを享受することができるようになりました。

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 しかし、それに迎合することは非常に危険です。自動車依存型の都市構造や店舗での照明や冷暖房の過剰使用にによるエネルギーの浪費、環境破壊もさることながら、中心市街地という地域の顔を失いかけています。
歴史のある街は、様々な人がいて、時代の積み重ねがあったりして、固有の文化を持っていました。
それを一挙に破壊してしまいます。そうなった地方都市は特色がなくなり、観光にも大打撃を与えます。
「街」の喪失は、個人の主体性も、人間的な空間も失います。地域から具体的な個人を消してしまったと言い換えてもいいでしょう。
自動車に乗れない高齢者の方々にとっては、非常に不便になるばかりか孤独感を強めます。
 また、多くが県外資本で、利益の大部分を直接県外に流出させてしまいますので、地域経済は衰退します。
ほとんどがパートやアルバイトであり低賃金の労働者を構造的に抱えてしまいます。安いといって喜んでばかりはいられません。
 そもそも、ロードサイド店はただの商業施設であり、永続的な街ではありません。
恒久的な街をどう構築し育てていくかが、今求められています。

 酒屋や米屋など個人の商店しかなかった頃には、コンビニにヤンキーがたむろし、ケンカすることは考えられませんでした。
地域の精神まで荒廃してしまうのがファスト風土化です。ファスト風土化は「下流社会」で有名な三浦展氏の造語です。

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西村 野本さんは「中心市街地再開発と言いましても、駐車場を多く作っても街は活性化しない」とも言われています。
 そのあたり具体例で説明をお願いします。

野本 よく中心市街地の衰退問題で、「駐車場が足りないからダメなんだ。もっと駐車場を増やすべき。」という意見を聞きます。今でも帯屋町などの商店主はそう考えているようです。しかし、残念ながら駐車場で街は活性化しません。まず、いくら整備したところで郊外並みには自動車のアクセスは便利になりませんし、駐車場の収容能力もかないません。
 それに、道路を作れば作るほど、駐車場を増やせば増やすほど、街中が自動車のための空間に占拠されてしまいます。街並みは歯抜けになり、景観も損なわれます。商店の数自体も減るばかりか、街自体の、魅力を失いかえって衰退も招きかねません。
一方で、自動車中心から発想転換した都市は、一回寂れた中心市街地を見事に甦らせて
います。駐車場の供給ではなく、公共交通を重視し、トラムを整備する、繁華街で完全にクルマを閉め出し歩行者と公共交通のみの通行を許したトランジットモールを採用した都市もあります。ヒューマンスケールの歩いて楽しめる街にすることが、中心市街地活性化の秘訣です。

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西村 高知は車社会であると思います。しかし個人で車を所有しますと最近はガソリン代も値上がりし、税金や車検代金、保険代や駐車場代など維持費が馬鹿になりません。しかし車に乗れないと不便な高知県であると思いますが。
そのあたりはどう思われますか?

野本 クルマは金がかかりすぎます。だから、僕はバカらしくて持とうという気にはなれません。ただ、免許は持っています。
購入費、税金、保険代、車検代、駐車場代、ガソリン代、高速代、とにかくお金がかかります。
すべてを勘案すると年間50万~100万程度は、かかっているでしょう。
一回、どこかにぶつけて板金修理するだけでも、十数万かかりますし。
クルマが趣味という人は、そんな負担も苦にはならないでしょうが、大多数の人は、維持費に汲々としていると思います。現実には、
家計を圧迫要因になっています。本来、個人で持つには、極めてコストパフォーマンスの悪い乗り物です。

ガソリン代は上がって、ますます維持費はかかりますが、郊外化により、より自動車を走らせなければならない状況を生んでいます。
これでは、ますます生活は苦しくなりますね。とはいっても、なかなか自動車利用を節減する発想にまで至らないのが現実です。
それだけ、自動車依存症になっているからでしょう。

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西村 「車を捨てて」とありますが、具体的にはどうなるのでしょうか?旧高知市街地であれば(東は葛島から西は蛍橋付近までであれば、路面電車と路線バス、自転車で殆ど用事はたせるとと思います。
 ただ自転車で走行する場合は、自転車道路がないところや、あっても狭い箇所や自転車やバイクが駐輪していて走りづらい箇所もあります。そうすれば良いと思いますか?

野本 自転車は、「軽車両」に属する立派な車両です。そのため道交法では、車道の左側を通行することが原則になっています。
歩道通行は、例外措置で標識のある歩道に限り、車道側を徐行して走るのがルールになっています。
しかし、それは有名無実で、自転車は歩道を走るのが当たり前になっています。
それが自転車の本来持ちうるポテンシャルを大いに阻害しています。歩道走行では、舗装が悪くて継ぎはぎだらけだったり、障害物が多い、交差点ごとに段差、勾配があるなど自転車が快適に速く走るには全く適していません。

それに歩行者にとっては脅威です。自転車にはねられて死亡すると事故も起きています。歩行者が快適に街を歩けるように繁華街の歩道からでも全面通行禁止にしてみては。まずは、アーケード街からでも徹底してやればいいのにと思いますが。常時カメラで録画して、違反者はオビパラやひろめ市場あたりの街頭に、写真を貼って晒すぐらいのことをしたら、
効果あるでしょう。

ちょっと自動車が怖いかもしれませんが、出来るだけ車道を走ることをオススメします。舗装がしっかりしているので歩道を走るのとは、比べ物にならないくらい快適に走れますし、スピードも出ます。さすがに、郊外のバイパス道路は、厳しいかと思いますが・・・。
ある程度のスピードが出てこそ、自転車が都市交通手段としての地位を得るわけです。

私事ですが、中学生のころから夜須~高知の22kmをジャスト1時間で走ることも、自転車の高速化により実現しました。
土電バスより速い、しかもタダ。自転車のポテンシャルの高さをこの頃から認識するようになりました。

自転車は、多くの人が思っている以上に快適な乗り物で、速度も出せ、20km程度は楽に走れる航続距離を有しています。
もし、自転車通勤するとしたら、半径15km程度までなら十分可能です。自転車ツーキニストを世に広めた疋田智さんはそうおっしゃられています。
それは、はりまや橋を起点にすれば、東は野市、西は日下、高岡あたりまでとかなりの範囲が通勤圏に入ります。
健康維持やガソリン代の節約に大いに有効であるし、地域のあらたな魅力発見もあるかもしれませんよ。

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西村 野本さんは「車を捨てることが環境対策になる。高知はエコ宣言をすべき」とも言われています。地方生活者に入り込み、生活の一部にまでなっている自動車。捨てることは可能なのでしょうか?

野本「ここではクルマがないと生活できない」というのは、決まり文句のように言われています。
「できない」という言い方が示唆することは、自動車の所有や使用が積極的に求められる行為ではなく、むしろ消極的な意味を含んでいます。かつては、自動車を持つことに大きな夢がありました。しかし、今では、生活必需品となってしまい運転したくなくてもせざるを得ないものになっています。
維持費がかかる、事故など起こしたら面倒だ、ストレスがたまるなど、できればないほうがいい、運転などしたくないという方は、結構いらっしゃると思います。

現状では、各家庭に1台はないとどうしても不便ですが、複数台所有することが果たして合理的なのか考え直してみるべきだと思います。
そのうち1台は、ほとんど3~8kmほどの通勤にしか使ってないならば、
自転車で十分代替できます。遠くに行く場合でもたまになら公共交通の利用もたいした負担にはなりませんし。
現実に、約6~7割の自動車での移動は、半径7km以内に収まっていると言われています。近距離は、自転車で対応し、公共交通で不便な遠距離を走る場合に、家族で融通をきかして1台の自動車を使うなどすれば良いでしょう。
自転車の移動能力を再認識することが、大きなカギになりそうです。

それでも必需品を手放すには勇気がいります。しかし、勇気出して手放した人は、なんでこんなものに乗っていたのだろうと不思議に思うとか。確かに、日々の維持費などを考える必要がなくなるので精神的に楽になるわけですね。

Zitensya12 (自転車と電車の組み合わせ。写真は「土佐電鉄の電車とまちを愛する会」の浜田光男(てるお)さんに提供いただきました。熊本電鉄の車両は自転車持込が認められています。)

西村 中心街から車を締め出して(というか上手くコントロールして)活性化した都市の事例がありましたらご紹介くだしさい。
また国内での事例もありますか。

野本 様々な事例がありますが、一つだけ紹介します。米国オレゴン州ポートランドの例を簡単に説明します。
1 970年代より、バスを中心街では無料にするなど公共交通活用において先進的な取組みをしてきました。中心街と郊外を結ぶライトレールも20年前に開通し、現在でも路線を拡充中です。その他にも、駐車場の総量規制や公共交通整備とリンクした都市開発などで、自動車の氾濫を上手く抑えることに成功しました。その結果、人々が集い楽しめる都市空間を手に入れました。

そういうこともあって、全米一住みやすい都市だと評価されています。
翻訳家でエッセイストの渡辺葉さんは、ニューヨークを離れポートランドに2年間暮らしていたようですが、
ポートランドを選んだ理由の一つに、「公共交通が発達していてクルマなしでも生活できる」ということが結構好意的に受け止められています。

 国内では、まだ本格的な実施例はありません。高知なら御免町や朝倉の旧道でトランジットモールを設定してもよさそうです。

西村 自転車の効用について。自転車を都市生活で上手に活用している事例はありませんか?あればご紹介ください。

野本 究極の自転車都市と言えば、ドイツのミュンスターが挙げられます。ここでは徹底しています。
まず、駅前からして洒落た自転車の駐輪場が設けられています。いや、ただの駐輪場ではなく、一見、美術館かと間違うような外観でデザインからして日本の駅前によく見られる駐輪場とは別物です。さらに、レンタサイクル、自転車の修理や洗車のサービス、パーツの販売など「自転車の総合ステーション」と言うべき施設です。

そして、市内には自転車の通行空間がよく整備されています。かつては、中心街も氾濫する自動車に悩まされていたそうですが、今では、旧城壁内は自動車は原則締め出し、歩行者と自転車、バスなどの公的車両のみしか入れないようになっています。
 自転車の活用の結果、空気がきれいになる、交通事故も減る、渋滞も緩和するなど様々なメリットももたらしました。

 ヨーロッパでは、オランダとデンマークが最も自転車活用に取り組んでいます。特に、オランダでは、国土の大部分が干拓地であり地球温暖化に対して危機感をもっています。フランスやイギリスではそれほどでもないようで、ヨーロッパといえどもピンからきりまであります。
さきほど挙げたポートランドも全米で最も自転車交通が進んだ都市です。10年間で、自転車利用が3倍に増えたとか。
 ライトレール車両やバスにも持ち込み可能であるなど自転車を活用する仕組みが整っています。

Hartrum1 写真は「土佐電鉄の電車とまちを愛する会」の浜田光男(てるお)さんに提供いただきました。

低床床電車(土佐電鉄)ハートラムです。

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